日本以外の国では糖質制限は糖尿病治療として認められているのか

糖質制限は耐糖能が低下する、厳しい脂質制限で耐糖能が改善するという新説に遭遇してから、これまで見ていなかったサイトの情報もいろいろ見ています。面白そうな情報を紹介しようと思っています。

アメリカ糖尿病学会のサイト等を見ていて、グローバルには糖質制限は糖尿病治療として認められているのだろうか、とふと思いました。新たなに知った情報を紹介する前に、日本の糖尿病学会の方針から

アメリカ糖尿病学会と糖質制限治療

アメリカ糖尿病学会の糖質制限治療に対する立場は、そのホームページからリンクされている雑誌(Diabetes Forecast)の記事に明確に記載されています。

アメリカ糖尿病学会(ADA)は、低炭水化物食の計画を推奨も反対もしていない。(原文:The American Diabetes Association (ADA) does not advocate for or against a low-carb eating plan)

またその雑誌の記事には、低炭水化物食の論争点、長所、短所が書かれていますが、私なりに勝手解釈すると

低炭水化物食によって糖尿病患者の血糖コントロールが達成できている例があることは認める。
しかし
・しかしどの程度の低炭水化物量が適切かはコンセンサスがない。
・生活スタイルとして長期に継続できる食事法とは思えない
・飽和脂肪を多く取りがちになる問題点がある

ということのようです。

だから、
肯定しているという意味合いで「ADAは糖質制限を認めている」というのも間違い(都合の良い訳)であり
否定しているという意味あいで「ADAは糖質制限を認めていない」というのも間違い(都合の良い訳)であると思います。

私の印象としては肯定か否定かどちらに近いのかというと、どちらかといえば肯定ではなく否定よりの立場、と感じました。

詳しくは2018/8/21の記事アメリカ糖尿病学会は糖質制限を推奨しているのか?にあります。

日本糖尿病学会と糖質制限

日本糖尿病学会は2013年3月の「日本人の糖尿病の食事療法に関する日本糖尿病学会の提言」で

総エネルギー摂取量を制限せずに、炭水化物のみを極端に制限して減量を図ることは、その本来の効果のみならず、長期的な食事療法としての遵守性や安全性など重要な点についてこれを担保するエビデンスが不足しており、現時点では薦められない。

としています。

これは、明らかに否定的である印象を受けますが、エビデンスさえあれば認めるよ、と方針転換できる逃げ道を作っている方針と感じます。

もう一つのポイントは、この見解は減量を図るための糖質制限についての見解で、日本糖尿病学会は治療としての糖質制限に公式には一切触れていないことです。

糖尿病治療には日本糖尿病学会の勧めるカロリー制限しかない、という立場と思われます。ここがいろいろな食事法が有効であるとしているアメリカ糖尿病学会とは大きく異なる点です。

詳しくは2018/6/26の記事日本糖尿病学会と糖質制限にあります。

日米以外のグローバルな糖質制限事情

国などの公式見解は糖質制限に否定的なのかも

糖質制限否定派のブログに、各国が勧める「飽和脂肪酸摂取量」はほぼ同じ、という記事がありました。

(糖尿病ではない)健康な人に対するWHOの指針、米国糖尿病学会の指針、日本糖尿病学会の指針が掲載されています。そして「欧州糖尿病学会のサイト等を見ても、だいたい同じようなことしか書いていません。」とされています。更に、米国心臓病学会は、飽和脂肪酸を制限することを推奨している、とのことです。

タイトルが「各国の勧める糖尿病患者の脂肪摂取量」となっているのに書かれているのは「飽和脂肪酸」についてであること(飽和脂肪酸は脂肪に含まれますが、飽和脂肪酸=脂肪ではありません)、更に、各国のといいながら、日本とアメリカ以外の情報は何も書かれていません。

こういうロジック展開には気をつけたいものです。(ロジックの展開がおかしいからと言ってそこで主張されていることが間違いであるということにはなりません。信憑性が低い、ということです。)

ですが、まあ、アメリカと日本の糖尿病学会の立場がおおむね同じ、ととらえれば、だいたいどこの国でも同じようなものだという想像は否定できません。というか私も事実は知りませんが多分そうだと思います。これだけグローバルに情報が共有され国際学会などもあるのだから、糖尿病患者の食事療法は多少の違いがあっても大筋は同じだと思います。仮にほとんどの国が当節制限を治療として積極的に認めていたとしたら、、日本糖尿病学会も、世の中全体と異なる主張をするリスクはとらないと思われます。

糖質制限も認められつつある

糖質制限の効果を示す調査研究・論文

糖質制限の効果を示す海外の調査研究や論文が糖質制限派の医師のブログなどから紹介されることがあります。これはある程度その論文を提出している機関(大学など)と採択している学術誌(学会誌や科学雑誌)が糖質制限をある程度認めていることを示している、と考えてよさそうです。

科学雑誌に採択される論文は、これまでの通説、過去の論文ににそって仮説が作られ、それを調査や実験で検証する仮説検証がほとんどです。通説と無視した研究や調査が認められ予算がついて実施されることはレアケースです。まして学会誌となると、学会が否定している説の論文が採択されることはほぼないでしょう。

「STAP細胞」が当初大騒ぎになったのは、これまでの通説を覆す研究であり、それが権威あるネイチャー誌に採択されたからです。通説を覆す研究が行われつことも、それが世界的権威が認めるということは極めて稀なことなのだと思います。

糖質制限に肯定的な結果の論文が出てくるということは、その説が研究を行う前から一定の範囲で支持されており、論文の採択を判断する専門家にも一定の範囲で支持されていることを示しています。

海外で糖質制限に肯定的な結果の論文が出てくるということは、ある程度糖質制限が肯定されている、と判断してもよい、ということです。

ただし、大学の発行している紀要の様な雑誌は論文の体をなしていいれば「何でもあり」(そもそも論文が出てくることに価値がある)ということもありますから、論文誌の質が論文の質と関係するわけです。(だから、ランセットに載ったという話に意味があることになります)。また、糖尿病関連の研究か、その他の医学や栄養学などの論文か、も見る必要はあるでしょう。

イギリスの場合

Diabetes.co.uk というイギリスの糖尿病サイト(ヨーロッパ―で最大の糖尿病コミュニティサイトで、信頼性は高いようです)によれば、
(私の勝手訳(省略あり)が青です。)

2016年のNHSの糖尿病の食事へののアドバイスは、糖尿病患者に特別な食事はないということである。
*イギリスにはNHS(National Health Service)という国営医療サービス事業があります。ウィキペディアによればイギリス国家予算の25.2%が投じられているということですから、国そのものと言ってもよい機関なのでしょう。

糖尿病患者の多くは、食事の炭水化物含量に注目しき、タイトな血糖コントロールのために低炭水化物食を好む

NHS(および英国の糖尿病)は、脂肪、砂糖、塩分が少なく、新鮮な果物や野菜の多い、健康でバランスの取れた食事を勧める。

NHSの推奨する糖尿病患者の食事は

低GIのデンプン質の炭水化物をたくさん食べる
食物繊維の量を増やす
果物と野菜をたくさん食べる
脂肪、飽和脂肪を減らす
代わりに不飽和脂肪を含む食品を選ぶ – 植物油、低脂肪の塗るもの、油の多い魚、アボカドなど
低脂肪乳製品を選択する
赤身でない肉 – 皮なしの鶏肉など
肉の脂肪や加工肉を避ける
少なくとも週に2回は魚を食べ、1回は油の多い魚を取る
卵と豆は良いタンパク源
フライやローストの代わりに焼く蒸すなど
脂肪や甘いスナックを避ける – チップス、ケーキ、ビスケット、ペストリーなど
果物、無塩ナッツ、低脂肪ヨーグルトなどのスナックを食べる
砂糖を減らす
塩分を少なくする – 1日あたり6g未満
アルコールを減らす
朝食を抜かないください
水分補給―毎日1.6リットルと2リットルの間

です。

このNHSの奨励する食事法について、このサイトは

いくつかの点は間違いなく正しいが、一部はイギリスを代表する医療専門家や患者から批判されている。
炭水化物をたくさん食べることや肉や乳製品の脂肪を避けることは、特に2型糖尿病患者の血糖コントロールが悪くなる可能性がある。
炭水化物が脂肪やたんぱく質よりも多くのインススリンを分泌させることが2型糖尿病患者には問題である。インスリンの分ピル量が多いとインスリン抵抗性が高まることがいくつもの研究で示されている。インスリン抵抗性と食事の炭水化物による2型糖尿病患者へのアドバイスの視点からは、NHSの推奨する食事はインスリン抵抗性の問題を増加することになる。

アンダーラインを引いたことをから推測すると、日本より糖尿病の糖質制限が一般的になっているように思えます。
国は従来の方針を変えていないが、糖尿病治療では糖質制限が一般的になりつつある、という感じなのでしょうか。

インスリンの分泌がインスリン抵抗性を高める、という説が有力になっているのでしょうか。これは知りませんでした。もしそうであれば、2型糖尿病には糖質制限がよいということになりそうです。
脂質制限の根拠として、脂質を取るとインスリン抵抗性が高まる、ということのようですから。

時間のある時にこのサイト、ゆっくり見てみようと思います。

スウェーデンの場合

スウェーデンの医療従事者を中心にしたhttps://www.dietdoctor.com/というサイトにもたどり着きました。これは糖質制限とケトン食を支持するサイトのようです。
日本糖質制限医療推進協会のスウェーデン版といったところなのでしょうか。

面白そうな内容もあったので、これもゆっくり見ようと思います。

日本のこれから

江部先生のブログに興味深いコメントを見つけました。コメント主は医師の中嶋一雄先生です。

中嶋先生の掲載した情報
日本人糖尿病患者の食事アプローチ:系統的レビュー
http://www.mdpi.com/2072-6643/10/8/1080/htm
山田 悟、壁谷悠介、能登 洋

我々の研究によると、特に日本の糖尿病患者の食生活についてのエビデンスはほとんどなく、日本糖尿病学会が唯一の食事管理アプローチで推奨しているエネルギー制限食は、科学的根拠によって支持されていないことが明らかになった。

我々の知見は、エネルギー制限食ではなく炭水化物制限食が、日本人患者の糖尿病管理に短期的な利益をもたらすかもしれないことを示唆している。しかし、我々の分析は限られた数の小規模無作為化比較試験に基づいているため、これらの患者の食事療法を検討する大規模かつ、または長期の試験が、我々の知見を確認するために必要である。

中嶋先生のコメント
2019年春に食事摂取基準(2020)と日本糖尿病学会ガイドライン(2019)が公表される。この論文は大きな影響をあたえるであろう

2019年に糖尿病学会がどのような見解を公表するか楽しみですね。糖質制限派が満足・納得するような、大きな変更はしないと予測はしますが。

結論

日米以外には、イギリスとスウェーデンしか見つけられませんでしたが、糖尿病治療としての糖質制限が認められつつある、という印象です。そしてそれに反対する勢力のほうがまだ多数派であろうことはなんとなくわかります。ですから糖質制限を否定するような調査研究や論文はこれからも出てくるでしょう。

科学の使命としての真実の探求や、あるいは研究者の功名心などから、糖質制限の長期的安全性に関する調査研究が競って出だす時期が近付いているのではないか、そんな期待もしました。必死にそれをつぶそうとする力との戦いかもしれませんね。

全く対極の「厳しい脂質制限で糖尿病が治る説」にも継続して関心は持とうとは思います。

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